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喫煙によって引き起こされる病気といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは肺がんでしょう。
でも、タバコは心臓や脳、消化器や口腔内にも影響を与え、さまざまな病気を誘発しその症状を悪化させます。口の中は、身体に侵入するタバコの煙が最初に通過するところです。それが全身を巡って及ぼす健康被害は、目で確認できない他の臓器とは異なり、その異変をすばやく発見できるという特徴もあります。毎年5月31日はWHOが定める『世界禁煙デー』です。厚生労働省では5月31日からの一週間を禁煙週間と定めています。
2021年の禁煙週間のテーマは「たばこの健康影響を知ろう!~新型コロナウイルス感染症とたばこの関係~」でした。新型コロナウイルスの脅威によって、強い気持ちで『禁煙の誓い』を立てた人も多いのではないでしょうか。今号では喫煙による口腔内への影響を知ってもらい、喫煙者・非喫煙者を問わず、全ての人が「タバコの害」について深く考えてもらえればと思います。
タバコの煙には5,300種類以上の化学物質が含まれており、そのうちの200種を超える化学物質が有害であると言われています。その中でもとくに身体に深刻な影響を与えるのが以下の3つです。
● タバコの葉に含まれる天然成分で、薬効として大脳の快楽神経に作用し、依存性を高める。
● 少量の摂取では興奮作用、多量の摂取では鎮静作用をもたらし、タバコに依存する原因になる。
● 歯槽骨の吸収を引き起こす炎症物質を増加させ、歯肉や骨などの健康な細胞を傷つける。
● タバコに含まれる粒子状物質で、歯の表面に付着して、黄色や茶色に変色させるヤニの正体。
● 発がん物質として悪名高い。肺がんや咽頭がん、口腔がんのリスクを高める。
● 酸素を運ぶ役割をもつヘモグロビンと結びついて酸素の運搬を阻害し、体内を酸欠状態に。
● 動脈硬化や循環器系の病気を引き起こす
● 活性酸素を生み出して体内の老化を促進させる。そして、喫煙による影響は口腔内のいたるところに連鎖し、悪循環を引き起こします。
<ヤニの付着>
タバコの成分のひとつ、タールが歯の表面に付着。歯本来の美しさが損なわれる。<唾液の減少>
タバコの成分によって唾液の分泌機能が低下し、細菌感染や口臭の原因に。<歯石の付着>
唾液の分泌量が減少し、歯垢や歯石が付きやすい口内環境に。<口臭の発生>
タバコそのもののニオイだけでなく、唾液量の減少によって細菌が増殖し口臭が発生。<血管収縮>
ニコチンが毛細血管を収縮させ血流が低下、口腔内組織が栄養失調状態に。<酸素不足>
一酸化炭素の影響で体内が酸欠状態に。歯周ポケット内も歯周病菌が大好きな酸欠状態に。<歯肉の変色>
タバコの刺激によってメラニンが発生。色素沈着を起こし歯肉を黒っぽく変色させる。<口腔がん>
タバコの成分には50種類以上の発がん物質が含まれていて、口腔癌のリスクが高まる。<味覚障害>
喫煙によって口や鼻、胃の粘膜が荒れたり、亜鉛不足になり、味覚障害を引き起こす。歯周病は、歯の周囲についたプラーク(細菌のかたまり)が歯と歯ぐきの間に入り込み、歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまう病気で、歯を失う原因のNo.1です。
喫煙者の歯周病の特徴のひとつに「炎症症状が現れにくい」ことがあげられます。私たちが発見できる歯周病の初期症状といえば歯肉の腫れやブラッシング時の出血ですが、これらがニコチンの強力な血管収縮作用や一酸化炭素の影響で、歯肉が炎症を起こしていても出血が抑えられ初期症状に気づくことが難しくなります。
そのため、自覚症状のないまま歯周病が進行してしまうのです。医科の禁煙外来では、一定の要件を満たせば健康保険による治療が適用されます。
また、皮膚や口腔粘膜の接触面からニコチンを徐々に体内に吸収させ、ニコチンの離脱症状を軽減しながら禁煙を補助するニコチンパッチやニコチンガムはスイッチOTC医薬品として、薬局で購入することもできます。これらを利用しながら歯周病やその他の健康被害のリスクを減らし、ご自身の健康維持と望まない受動喫煙「ゼロ」を目指しましょう。
八幡通り歯科マガジン タバコと口腔疾患
on 2021年6月15日
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